こんなにも私のことを考えてくれて。
ここまで人の気持ちを考えられる人、そういない。
「香澄ちゃんだからだよ。ほかの子だったら違うよ。」
と、意地悪そうに笑った。
「私は香澄ちゃんとあずくんがお似合いだって思ったし、それにあずくんの気持ちは堅そうだったから。私じゃ変えられないって思ったから。
だから今日、けじめをつけたの。香澄ちゃんとのことも、自分の気持ちも....」
恋をしたことがないから、わからないけど。
好きな人を、この人が好きなんだって気持ちを捨てることってどれだけ苦しいんだろう。
きっと、私が想像するよりもっともっと苦しくてつらいんだろう。
私なんかのために。
人のためにそんなことができる凛ちゃんは本当に強い子だ。
「今まで、本当にごめんね....」
「ううん、私のせいなの....私が強がって素直な気持ち伝えなかったから....」
「私はもう、けじめつけたから。これからは心から香澄ちゃんのこと応援するから。」
私の目から、涙が止まらなかった。
色いろな感情が混ざりすぎてなんで泣いてるのかよくわからないけど。
でも、凛ちゃんの気持ちを考えたら涙を流さずにはいられなかった。
「チョコ、作ってきてるんでしょ?」
「え、あ、でも.....」
「待ってるよ、中庭で。香澄ちゃんのこと。」
「え....?」
「行ってあげて。」
「凛、ちゃん....」
「改めて、友達としてよろしくね。」
そういって、フワッと私のことを抱きしめた凛ちゃん。
優しい柔軟剤の香りが全身を包む。
「ちゃんと、自分に素直にね。」
ふたりとも、涙で顔がぐちゃぐちゃだ。
私は、作ったチョコを持って中庭に向かった。
「頑張って。」
そう、私の背中に向かって凛ちゃんが涙を流しながら声をかけてくれたことを私は知ることはない。

