「は、なれて.......」
「俺、どんなことしてたの?」
「自分で、わかるでしょ!」
「教えて?」
な、なに、こいつ.......
顔が近い。
私をまっすぐ見据えて。
挑発するように。
色気を含めた声が、私の耳に入ってくる。
「じゃ、邪魔!!」
どうにか力を振り絞って、黒河の体を引き離す。
し、心臓が、どうにかなりそうだ。
いくら男友達が多いとはいえ、こんな近くで、あんな声と目で。
話したことも、見つめられたこともなくて。
「香澄も、やってみる?」
「きゃっ........」
私はそのまま、机の上に押し倒された。
私の目に映るのは、教室の天井と黒河の顔。
私を色っぽく見据える。
ど、どうしよう........
体がいうことを聞かない。
心臓は飛び出そうなほど、ドキドキしている。
こ、こんな体勢.......
嫌でもドキドキしてしまう。
「アンタさ.......よくよく見ると、可愛い顔してんね。」
「ど、どいて.......よっ........」
黒河の胸を軽く押したが、ビクともしなくて。
それどころか、腕を黒河に取られて、身動きが取れなくなってしまった。
こういう時、どうしたらいいの?
どうすることが正解なの?
グルグルと考えるけど、正解が出てこない。
「おもしれーやつ。いつもは気が強いのに、こーされるとおもしろいくらい、静かになるんだな。」
満足そうに。
黒河は私のことを見ている。
なんでこんなことになってるの!
ケータイなんて放って帰ればよかった!
知らなかったふりして、教室に突っ込めばよかった。

