もしかしたら、私が梓にチョコを渡すタイミングすらないかもしれない。
私はそれからずっと上の空だった。
どうせ渡せないのかもしれないなら、作らない方がいいかな......
作ったのに渡せないなんて、嫌だし。
「......香澄!?」
「うわぁっ!」
「ちょっとー、大丈夫?帰るよ?」
「え?ああ、うん......」
気づけば放課後になっていた。
私のことを心配そうに見つめる美華。
美華の声にも耳に入ってこないほどボーッとしていたなんて。
急いで帰りの準備をした。
「チョコ.......作るべきかな......」
私は小声で美華にそう聞く。
「作るべき。」
「作っても、渡せなかったら.....?」
「意地でも渡せ。」
命令された.......
だけど、いつどんなタイミングで渡せばいいの?
凛ちゃんはいつ渡すんだろ?
もし、告白が成功してふたりが付き合ったとしたら.......
私がチョコ渡しても突き放されるんじゃ......
だけど、チョコ期待してるって言ってたし、貰ってはくれるのか.......?
そもそも、梓は告白を受け入れるのだろうか。
「ひとりでボソボソ何言ってんの?」
「ご、ごめん。」
なんか色んなものがゴチャゴチャしてる。
「とりあえずチョコは作って、告白のあとだろうが前だろうが。結果がどうであろうがちゃんと渡す!」
「は、はい......」
「うん。よろしい。」
なんだ、このやりとりは.......
だけど、材料買ったし。
期待してるって言ったのはあいつだもん。

