「モテモテなんだね、香澄ちゃん。」
「女の子にモテるのもなんかちょっと変だけどね。」
バレンタインなんて気にするな。
いつも通りが1番。
それが一番いい方法なんだ。
そう思ってたのに。
「俺、よゆーでチョコ食えるから。」
なんて、バカみたいなことを言い出したのはもちろん梓。
放課後、カバンに荷物を詰めながら帰りの支度をしているといきなりやってきたのだ。
なんだか、久しぶりかも。
こうやって、梓とまともに会話するの。
「だ、だから何よ!」
「期待してるからよ。」
「はあ!?」
「香澄の手作りチョコレート。」
「もちろん義理チョコなんて受け取らねーから。」と、続けた。
もう......!!
バレンタインは気にしないって思ってたのに!
そんなこと、言われたら......
気合い入っちゃうじゃん。
手作りで、何作ろうかな?とか考えちゃうじゃん。
柄にもなく......ニヤニヤしちゃうじゃん。
「か、勝手に期待しときなさいよ!バカ!」
「りょーかい。心から期待しとくわ。じゃーな。」
顔に思い切り力を入れて。
ニヤニヤしそうなのを必死にこらえてそう言った。
教室から出ていった梓の背中を見えなくなったあともぼーっと見つめていた。
期待、してくれてる。
私の、チョコを.......
ど、どうしよう......
想像以上に、心から嬉しさがこみ上げてくる。

