【完】恋なんてするものか!







この距離からで、深くはわからない。






驚いていることはみんなと違いない。






だけど、驚き方がほかの人たちは違った気がする。







「じゃあ、栗原さんは奥の空いてる席に座って。」






「はい。」





一番左の列の一番後ろの席。





そこが栗原さんの席らしい。






梓の前を栗原さんが通った時だった。






「あれ、あずくん?」






「お前、帰ってきたのか?」





「そうなの。奇遇だね、同じ学校の同じクラスなんて。」






「ああ。」






ふたりの会話が聞こえた。






「なんだ、そこ知り合いか!」






先生が話すふたりを見て声をかけた。






「はい、幼なじみで。」






その言葉を聞いて、なんとも言えない感情に襲われた。






幼なじみ........






それは、小さい頃から一緒にいたってこと。







そう、私とそうちゃんみたいな関係。






あのふたりは、幼馴染なんだ.......







そのまま栗原さんは自分の席についた。





そのあと特に何もなく、授業が開始された。






1時間目が終わった休み時間。






みんな勢揃いで栗原さんの席に群がった。





それは男子も女子も。







質問攻めにあってる栗原さんだけど、どんな質問にも笑顔で楽しそうに答えていた。







「何もないといいですねー。」







「な、何もって何よ。」






「幼なじみほど面倒な恋敵はいないわよ!」






美華は、栗原さんが私の恋敵になると思っているらしい。






梓が栗原さんのことをどう思ってるのか。





逆に栗原さんが梓のことをどう思ってるのか。







私にはさっぱりわからないから。






恋敵になるもならないも言えないけど。





だけど私の知らない梓を知ってることは事実で。







私が知らない時間をあのふたりは一緒に過ごしたんだ。





そう考えると、とても胸が痛かった。