ふたりが吐く白い息は、澄んだ空気に消えていく。
繋がれた手にいつも以上に意識がいってしまう。
相変わらずドキドキと胸は高鳴る。
来た道を二人で戻る。
「さみーな。」
「冬だからね。」
「冬と夏、どっち派?」
「私は断然、夏。テンション上がる。」
「ははっ、香澄らしい答えだな。」
ふたりで他愛のない話をする。
こんな時間でさえも愛おしいと思ってしまう。
どうかしてしまったのか、私は。
梓に恋をしてしまったんだと気づいてから、こんなに考えが変わってしまうなんて。
今まで思ったこともないようなことが、心の中でぽんぽんと浮かんでくる。
それを口にすることが出来ない私は、かなりの小心者なんだろうけど。
バスに乗りこんで、駅に向かい、電車に乗り込む。
少し混み合ってる電車の中。
椅子に座ることはできず、ふたりで手すりにつかまっていた。
........なんか、あっという間だったな。
なんで楽しい時間は過ぎるのがこんなにも早いんだろうか。
物足りない気持ちでいっぱい。
「香澄。」
「ん?」
「座りな?疲れたでしょ。」
ハッとすると目の前の席がひとり分だけあいていた。
「でも、梓は.....?」
「俺のことはいーの。」
そう言われ、私は席についた。
この人はこんなに優しい人だったっけ?
ずっと嫌いだって思いながら生活していたから。
梓の恋の罠にかかったってしまったんだって分かってから改めて梓のことを考えてみると、そこまで嫌な人ではなんだな。
思い込みって恐ろしいものなんだな。
「梓こそ疲れてないの?大丈夫?」
「俺のことはいいって言ったのに(笑)大丈夫だよ。」
温かく笑う梓につられて笑がこぼれる。
恋すると、こんなに穏やかな気持ちになれるんだ。

