なんでだろう。
抱きしめれた瞬間、心がとても温かくなった。
そしてゆっくり、私は梓の背中に手を回していた。
自分で自分の行動に驚いた。
「なあ。」
「ん?」
「それ、期待していいの?」
「......」
そう言われても、仕方のないこと。
今までは一方的だった。
だけど今は、自分の意思で自分から抱きしめているんだから。
抱きしめれられてるだけじゃないんだから。
抱きしめられているから、いつもより声が近い。
耳元で、落ち着いた梓の声が聞こえてくる。
しばらく抱きしめあって、梓が体を離した。
私の目を見てそっと───
「なあ、キスしていい?」
そう囁いた。
とびきり甘い声で囁かれ、驚きやらドキドキやら戸惑いやらいろんな感情がごちゃまぜになって、反応するのを忘れそうになった。
私は首を横に振った。
「香澄とキスしたい。」
「だ、だめ......っ.....」
「どうして?」
「そ、そんなの、私たち付き合ってないし......」
「じゃあ付き合ってればいいんだ?」
「ま、まあ.......」
「じゃあ付き合えばいいじゃん。」
「付き合わない......よ......」
「なんで?俺のこと嫌い?」
な、なに、この質問攻めは......!!!