梓は今、ドSモードだ。
「それって、俺じゃなくても照れんの?」
「し、知らないわよ........」
「それとも、俺だから照れてるの?」
「....」
「あれ、図星?」
ち、違う!違う違う違う!!!
梓じゃなくたって、きっと同じようになってた。
恋愛経験薄いし、今だって、戸惑ってるからこうなってるだけで.......
な、なにも梓だからとかそんな特別な思いなんかじゃないし........
「ふーん、図星なんだ。」
「ち、違うって.......」
「じゃあ何でさっきいつもみたいに言い返してこなかったの?」
「そ、それ、は.......」
痛いところをつかれて言葉を失う。
すると、梓は私の片手をとると自分の心臓の位置に手を置いた。
「!!」
「俺は香澄じゃなきゃ無理。香澄だから今こうやってドキドキしてる。」
そう言って梓は照れくさそうに笑った。
いつも余裕たっぷりなくせに。
私ばっかりドキドキしてるって思ってたのに。
こういう時に、そんなこと言うのは反則だ。
本気じゃないって言い聞かせてきたのに。
ほかの女の子にも同じことしてる、同じこと言ってる。
そう自分に言い聞かせてなんとか今まで乗り越えてきたのに。
こんなこと言われたら、認めなきゃいけなくなるじゃん。
本当に本当の本気なんだって。
思い知らされるじゃん。
梓は椅子に座ったまま、私を正面から抱きしめた。

