『あれ?もしかして、また赤くなってたりする?』
「ぜ、ぜーんぜん?」
『そりゃ残念。夏休み明けたら香澄の顔が真っ赤になること、たくさんしてあげないとな。』
「しなくてよろしい!」
どんなことされるか、どんなことを言われるのか想像もつかない。
ポロポロと、私の胸が飛び跳ねるようなことを言ってくる梓。
私のことを早死させるつもりなのだろうか。
『遠慮すんなって!』
「してない!拒否してんの!」
『あらそーですかー。』
こんなバカみたいな会話ですら、今はもうなんか楽しんでる。
人の心っていうのは、日々変化していくものなんだな。
今まで大嫌いだったやつが、今ではこうやって電話までする仲になってたり。
逆に、仲良くて大好きだった人のことが嫌いになってたり。
未来のことは誰も予想なんてできない。
だから、自分のこれからの気持ちを決めつけたってそうなるとは限らない。
『じゃあ、ゆっくり寝ろよ。』
「うん。バイト、頑張ってね。」
『おう。香澄が応援してくれてるんなら頑張れるわ。』
「また調子のいいこと言って。褒めてもなんも出ないからね!」
『へいへい。じゃ、おやすみ。』
耳元で“おやすみ”と梓の声が聞こえると、電話が切れた。
頭の隅っこで、早く夏休み明けないかな。なんて思ってたり。
なんか今日は、よく眠れる気がする。
梓の『おやすみ』の声が耳の奥でこだましていた。

