『遊び疲れてるのに、電話付き合ってもらってわりぃな。』
「ううん、大丈夫。」
『声聞きたくなったら、ちょくちょく電話してもいーか?』
「ダメって言ってもかけてくるんでしょ?」
『ふはっ、バレたか?』
ホントに、調子がいいというかなんというか......
そろそろ憎めなくなってきたな。
それが梓なんだって、理解してきたから。
「仕方ないから、かけてきた時は出てあげる。」
『仕方ないから』とかなんとか言っちゃって、素直じゃないなあ、本当に。
“いいよ、出てあげる”って素直に言ってあげたらいいものを。
『さすが香澄。そういう優しいところが好き。』
「す、すす!?」
好きとかそんないきなり簡単に言わないでよね!
心臓が飛び跳ねる。
いつどんな言葉が出てくるか分からないから嫌になる。
不意打ちで想像もしていないようなセリフが飛んでくるから。
『どーせ今、顔真っ赤だろ。』
「誰のせいよ!」
『お前うぶすぎて、悪いヤツにくわれたりすんなよ!』
「ありえないから!」
「お前をくっていいのは俺だけなんだから。」
電話を耳に当てているから。
耳に直接あいつの声が入ってくるから。
それに加えて普段とは違う電話越しの声。
部屋中に私のこの早い鼓動が鳴り響いてるんじゃないかってくらい胸が速く動いていた。

