どうでもいいけど、近いもんは近いんだって!
「あんた、初(うぶ)なの?」
「は?何が。」
さっきからニヤニヤニヤニヤ。
人を見下したように。
とりあえず、顔をどけなさいよ。
こんな距離で自己紹介するやつがどこにいる!
「ふっ、おもしれー。」
なにが面白いのよ!
さっぱり意味不明。
何を言ってやがるんだ、こいつは。
「俺、黒河梓。」
「知ってます。だから、顔をどけてください。」
「あんたが、顔上げて、俺のこと見るならいいけど?」
何を言ってるんだ、さっきから。
「わ、分かったから!」
黒河の言ってることは理解出来ないけど、顔の近さに限界を感じた私は了解しざるを得なくなった。
私が頷くと、すんなりと顔が遠ざかった。
「ほら、見ろよ。」
上から聞こえる偉そうな声。
なんで命令口調なわけ?
なんでそんな俺様なのよ。
ムカつく。
ゆっくり顔を上げ、黒河を見る。
「ぶっ。」
私が顔をあげるなり、吹き出した黒河。
はあ?
何よ人の顔見て笑うなんて。
失礼にも程があるでしょ!!!
「なに、人の顔に文句でもあるわけ?」
「いや?」
「なら何よ、その反応は。」
「お前、顔赤くなってるけど。」
「はあっ!?」

