それから数ヵ月ー

季節は冬になろうとしていた。

信都さんは相変わらず私に関わらないどころか、避けている。

連絡だって、してくれないんだ…。

私へのいじめは収まったけど…信都さんと一緒に過ごせないことが辛すぎる。

そんな私を気遣ってくれる光と会長様。

会長様(改め、高見さん弟)は私をずっと支えてくれた。

「もうすぐクリスマスだね!息抜きがてら、デートしない?」と言ってくれた。

私があまりにも辛そうで、見てられないからと。

その優しさが嬉しくて、「はい!」と私は言った。

その日からクリスマスまで私はあっという間の時間を過ごした。

みんなのプレゼントを色々考えた。そして、クリスマスまでにプレゼントを用意した。

迎えるクリスマスー

待ち合わせた場所は大きなツリーの下。

キレーって思わずみとれてた。

「ゴメン!お待たせ~」と言って現れた高見さん弟。

「あー、はい」と私は言う。

「実は…ちょっと付き合ってほしい場所があるんだ…」と案内された場所は…

そこにはナゼか、信都さんがいた。

「先輩…」私は嬉しくて思わず抱きついてしまった。

そんな私を信都さんは優しく抱き締め返してくれた。

「何で…いるんですか?」と私が言うと、

「俺からのクリスマスプレゼントって、カッコつけすぎ?」と高見さん弟は言った。

「いえ、嬉しいです!!ありがとうございます」と私は言った。

「あ、そうだ、会長、プレゼント用意してるんです!!」と私は言って、鞄からプレゼントを取り出して、渡した。

「えー、何?ありがとう!めっちゃ嬉しい!!開けていい?」と目を輝かせて言ってくる高見さん弟は袋を開けた。

「えっ、マフラー?しかも手編み…」と言って凄く喜んでくれた。

「実は…お兄さんの分も用意してるんですけど…色違いのマフラー編んだんです。どーしよ…」と私が言うと、

「待ってて!!電話してすぐ呼ぶから!!直接渡してあげて!めっちゃ喜ぶと思うから。あ、二人で話でもしてて」そう言って、スマホ片手にどっかに行ってしまった。

おいてかれた、信都さんと私、

「お久しぶりですね…こうしてちゃんと話せるの…」と私が言うと、

「うん。けりはつかなかった。けど…これからは何があっても俺が守るから、俺の彼女になってくれないか?アイツらもわかってはいるんだよ!ほんとはいいやつらだし…」と信都さんは言った。

「はい!」と私はとびきりの笑顔で笑った。私たちは、恋人になった。

「merryChristmas。これ、プレゼント…」と信都さんは言って、小さな箱を渡した。

先輩に開けてみてと言われて開けると、そこには可愛いハートのネックレスが入っていた。

「ありがとうございます。実は、私も用意してあったんです。先輩に逢いたくて…これ」と私は言って袋を差し出した。

中には手編みの、手袋、マフラー、ニット帽の3つを入れといた。

「いいのか?こんなにもらって…」と信都さんは言うものだから、

「だって…先輩の為に編んだんですもん!受け取ってください!!」と私は言った。

そして、早速、マフラーをして、ニット帽を被ってくれた。

「ネックレスつけてあげる」そう言って信都さんは私にネックレスをつけてくれた。

可愛い!!凄くキラキラしていた。

私達はしばらく見つめあっていた。

そしたら、「う、うん」とひとつ、咳払いが聞こえた。

どうやら高見さん弟が戻って来たようだった。

って…高見さんも一緒?来るの早くない?!

「弟から話聞いて…嬉しくて飛んで来ちゃった♪merryChristmas、二人とも」と高見さんは言う。

私は思わず席を立ち、頭を下げてしまった。

「何の真似?」と高見さんは冗談ぽく言った。

「色々と、ありがとうございました。と、ごめんなさいかなと思いまして…これ、気持ちなんですけど…」と私は袋を差し出した。

「おぉ、手編みのマフラーだぁ!ありがとう、香。大事にするね!」と高見さんは笑って私の頭を撫でてくれた。

「仲良しなお二人でリバーシで使えるようにと思って…色違いで編んでみました」と私が言うと、二人は声を揃えて、しかも同じ笑顔で私にお礼を言った。

「一部始終見てたんだけど…二人とも、よかったね!幸せにね。あ、何かあったらいつでも言いなよ!」と高見さんは言ってくれた。

私と信都さんは頷いた。

「俺もっと頑張るから、キミに相応しい男になれるように…負けてられないし…」と信都さん、

「俺も最後のアガキをするよ!二人の為に…」と高見さん弟は言った。

「二人ともありがとうございます!!」と私は思いきり頭を下げた。

「さてと…このあとはどーしよう?とりあえず、クリスマスデート楽しみたいね!」と高見さん弟は言う。

そうだったーうっかり忘れてたけど…今日の本来の目的はクリスマスデートだったー

「なら、今日は俺帰るね?香、またね」そう言うと信都さんは去っていった。

そのあとを追うように、高見さんも去っていった。

「ゴメン!俺そんなつもりなかったのに…俺もバカだね。空気読めない…」と落ち込む高見さん弟は少し可愛いと思えてしまう。

「いいえ、そんなことないですよ?最高のクリスマスプレゼントありがとうございます」と私は笑った。

そして、改めて、デートを楽しんだ。

今日だけは…考えたくない、族のこと。

だってクリスマスよ?なのに…頭の片隅にはやっぱり残ってる。

みんなどーしてるかな?とか、こんな日を狙われてるんじゃないかとか。

「どした?もしかして…楽しくない?」といきなり顔を覗き込まれた。

とんでもない!「ごめんなさい。色々考えてしまって…」と私が言うと、

「まぁ…そうだよね。これからのこととか…けどさ、あの人の彼女になったんだよ?もっと堂々としてなよ!」と高見さん弟は笑ってくれる。

「ありがとうございます」としか言いようがないわ。

そして、暗くなりはじめて…私達は家に帰った。

家に入ってLINEの音が聞こえたと思って、開くと、

『お疲れさま。今日は楽しかったよ!ありがとう』と高見さん弟からきていたので、こちらこそありがとうございますと返しといた。

『そろそろ家着いたかな?久しぶりだけど…』と信都さんから着た。

嬉しくて色々書いちゃう。

『また、冬休み開けたら大変かも知んないけど…お互いに頑張ろうね!』と信都さんからの返事にはい!と送った。

珍しく、誰の迎えもない玄関。

けど…話し声?

私はそっとリビングのドアを開けた。

「いつもありがと、博明さん」とお母さんの声。

「いえいえ」と博明さんは言っている。

「辛くないのか?」とお父さんの声。

会話が気になった私は気づかれないようにそっと近づき、会話を盗み聴く。

博明さんは私に片想いしている?らしきことが聞こえた。

けど…お父さんもお母さんも、博明さんの本音をただ聞いてるだけだった。

なんか、物凄く申し訳ない気持ちになった。

優しくて…お兄ちゃんみたいで、ホントにいつも甘えたな私。

それを優しく受け止めて見守ってくれてる博明さん。

私の選択は間違ってたのかしら?

ふと、苦しくなり、私はリビングを出ようとした。

音を立ててしまい気づかれたー

「いたのか…お帰り」と笑顔で迎えてくれる博明さん。

苦しかった。お父さんとお母さんは複雑そうな顔をしていた。

「ただいま…」とだけいった。

何をどう言っていいか、わからなかった。

言いたいことはたくさんあったのに…博明さんの気持ちを聞いてしまって、言葉がうまく出てこなくなった。

「ゴメンなさい!!」と私は言うと、リビングを飛び出した。

自分の部屋まで一気にかけあがり、勢いよく部屋のドアを閉めた。

「入れて?」いつもより優しい声がドア越しに聞こえた。

結局は私はドアを開けて、博明さんを受け入れてしまった。

今だけは逢いたくなかったのに…。

「ごめんなさい…」もう一度、そう言った。

「何で謝るの?謝る理由なんてないんだよ?」と博明さんは優しく言ってくれる。

でも辛い…。

「クリスマスだよ?merryChristmas香!!」と博明さんは言って私を抱き締めた。

「博明さん…プレゼント…」と私が言うと、離してくれた。

部屋の隅に置いといた、博明さんヘのプレゼント…。

手編みの白のカーディガン。

「いいのか?」と言って早速着てくれる。

「サイズ、ピッタリ!!採寸してないのに…?」と博明さんは驚いてる。

毎日こうやって、抱き締めてくれるんだもん。その感覚と、大体の見た目で…

「気にいってもらえましたか?」と私が言うと、「香から貰えるものならなんでも嬉しい。しかも、手編みなんて…ホントにありがと…」そう言うとさらに強く私を抱き締めた。

私はそう言ってもらえただけで幸せだった。