「ねぇ伊織くん……。手……」
離して?と言おうとしたら。


「マーヤ、今手を離したら逃げるだろ?もう俺は充分待ったし、もう離さないよ?覚悟して?」
私を見下ろして、繋いだ手を持ち上げると、チュッと私の右手にキスを落とした。

ボンッ!!て音がしたんじゃないかと思うくらい顔が熱くなって思わず俯く。

もうその後は、されるがままに伊織くんに連れられて歩いていた。


「ちょっとあのカップル美男美女で迫力あるね。」
「しかもなんか映画ですか?みたいな事してるけど。」
「それが様になってるのが怖いんですけど……」
という会話があった事なんて、全く聞こえていなかった私は。


繋がれている伊織くんの手にドキドキしていた。