「マーヤちょっと待ってて。」
そう言った伊織くんに、コクンと頷く。


そんな私に目を細めて笑いかける伊織くんにドギマギして、両手で頬を押さえていた私は気づかなかった。


伊織くんは、上原の所に行っていたらしい。


「お前らの明日からは、マーヤにかかってる。
楽しみに首洗って待っとけよ?」
と、絶対零度の微笑みをしていた事を、私は全く知らない……。


「さ、マーヤ行くよ。」


自然に繋がれた手に、ドキッとしたけど、嫌な感じはしなくて、むしろ安心できるというか……。


思わずギュッと握り返すと。

伊織くんが、私を見下ろして、とても優しく微笑んでくれていた。



「ていうか、あれ、普通に恋人同士にしか見えないね。」

「オレら、クビ繋がった感じ?」

「俺は認めないぞ!!」

「上原、諦めが肝心って言葉、知ってる?」

理枝が意地悪く笑いながら言っていたのも、やっぱり私は知らない……。