ティアラ

「もうだめだ」と諦めかけたとき、背後から走ってくる足音が聞こえてきた。

振り返った瞬間、その人物はあたしの目の前をすごい速さで通り過ぎていく。

「太一!?」

誰なのかわかったときは、もう森本は捕まっていた。

刑事ドラマのような光景。

上から覆いかぶさって、うつ伏せになる森本の両手首を掴み、ニカッとこちらに笑いかける彼。

「散髪屋だけですぐに見つけられるわけねぇだろ! バカ!」

皮肉な言い方をしているけれど、その表情は柔らかく、頼もしかった。