ティアラ

「どうして俺まで……」と、隣で太一はブツブツぼやいている。

直子と顔を見合わせていたあたしは、手っ取り早く話を聞こうと思った。

「で、お願いって何?」

そう問いかけると、友達とこそこそ話していた美緒ちゃんは、下唇を噛みながらあたしたちの顔を見る。

「ある男を騙してほしいんです!!」

眉間にしわを寄せながら、彼女は顔の前で両手を合わせた。

「……え?」

訳のわからないことを言われたあたしは、思わず顔を歪めてしまった。

面倒なことに巻き込まれそうな匂いがプンプンする。