「連れて来た相手を間違えたな優子!」


そう言いながら羽月は白崎先輩の顎を人差し指でなぞった。


「あっ…羽月くん」


少し色っぽい声を出し、熱い視線で羽月をみつめる白崎先輩を見て私の体は身震いした。


「優子よりも俺の方が好きみたいだけど?」


「……」


私は何も言えなかった。


やっぱり白崎先輩に頼んだのが間違いだった。


「俺を諦めさせる為にコイツに彼氏役を引き受けてもらったみたいだけど、コイツが男が好きだっての知ってて俺に会わせたのか?
まぁ、コイツが男が好きじゃなくても諦めるつもりなんてなかったしな。
俺を甘くみんなよ?昔みたいに優しい俺だけじゃねぇから。」


そう言った羽月は白崎先輩を立たせた。


「白崎さんだっけ?悪いけど今日は帰ってもらえますか?」


「え?どうして…さ、さっきはご褒美くれるって…」


「仕方ねぇな…」


そう言って白崎先輩を壁に追いやり手をドンッと壁に付いた。


男が男に壁ドンする光景を間近でみていた私はこれから何をするのかある意味、心臓がバクバクして、止めたいけど止められずにただじっと見ていた。


羽月の顔が段々と白崎先輩の顔に近づいて、唇ではなく耳元でまた何かを囁いた。


すると白崎先輩は力が抜けたのかそのまま下に崩れるように座った。


「おい!しっかりしろよ!さぁもう帰れ!」


そう言って白崎先輩を立たせると玄関まで連れて行き外ヘ出すとそのまま鍵を締めた。


リビングに戻ってきた羽月はネクタイを緩めて私に近づいてきた。


「何であんな奴に彼氏役なんて頼んだんだ?
あいつが演技できても俺が諦めるって思ったのか?
俺が優子に対する気持ちはそう簡単に消えたりしない。

馬鹿にするなよっ!」


そう言って部屋に入っていった。


あんなに怒った羽月の顔を見たのは初めてで、羽月に対して噓をついて諦めさせようとした事に対して怒ってるんだろう。


今更ながら羽月に酷いことをしたと後悔した。