「俺、つきあってる子がいるから」
俺にむけて無邪気に笑う花恋を思いだして、
ほほがゆるむ。
「知ってます」
「え?」
「花恋先輩、……ですよね?」
俺のおなかにうずめていた顔を上げて、
俺と視線が合う。
だけど、
腰に巻きついた腕はまだはなれない。
「有名ですよ?
みんなにつめたい斗真先輩が、
唯一笑顔になるのが花恋先輩の前でだ。
って───」
なんだそれ。
「だけど、それでも詩織、
先輩が好きなんです……」
ぎゅーっと強くだきしめられる。
「いや、あのさ……」
すると、急に顔を上げて、
「っ……」
俺にキスをしてきた。