ほとんど会話もない中、小乃美ちゃんはひたすらに俺の後をちょこちょこと付いてきた。



だいぶ人が少なくなって来た。



この辺でいいだろうか…



「小乃美ちゃん。」



俺はふと足を止めると、少しだけ後ろを振り返った。



「?」


「俺が前に言ったこと、覚えてる?」



大きな瞳をぱちくりさせて小首を傾げる姿は、仔猫みたいだ。



「“ 嫌わないよ。でも、多分、好きにもならない。”」



向き合った俺がその言葉を発した瞬間、小乃美ちゃんはひどく哀しそうな表情をして、うつむいた。



「分かって・・ー?!」



小乃美ちゃんの肩に手を置き、そっと唇を塞いだ。



呆然としている小乃美ちゃんに、俺はゆっくり言葉を紡いだ。



「本当はね。あの時すでに、小乃美ちゃんのこと…好きになってたんだ。」



すると、小乃美ちゃんの瞳がどんどん潤んできた。



「ごめんね。ひどいこと言って傷付けて。」



小乃美ちゃんはふるふると首を横に振り、



「こんな俺でも、付き合ってくれますか?」



ふと俺を見上げ、



「……はい。」



小さく笑った。



俺は小乃美ちゃんを引き寄せ、仔猫を包み込むように抱き締めた。



胸の中にいた小乃美ちゃんはギュッと俺の服を握り返す。



その仕草もこの温もりも、言葉にできないくらい愛しくて、何時間でもこのまま君を抱き締めていられる。



本当にそう思えた。