私がアイツに恋する時。




……。

もう何も考えられなかった。

ただ嬉しくて…泣いてた。

もう雄介君のことなんて頭のなかからどこかへ行ってしまっていた。



ガラガラ……。



静かに教室のドアが開いた。 

出てきたのは雄介君。


「なーんだ。聞いてたの?俺がこんな奴だってショック?悔しい?」


……どうしてこんな子のこと信じてたんだろ。   


「裏切り者。」


ただそう言うしかできなかった。


「じゃ……。」


うっすら馬鹿にしたような笑みを浮かべ、雄介君は走り去ってしまった。



「賀菜!?」


続いて中林も教室から出てきた。


「中林……。」

「もしかして……全部…聞いてた?」


よかった。

もう怒った顔の中林はどこにもいない。


「うん。」

「ごめん。」

「どうして中林が謝るの?こっちこそごめん。何も知らないで中林のこと……。」

「いいよ。つーか俺の言ってるごめんと意味違うんだけど。」

「え?」

「ずっと…無理やり賀菜のこと好きにさせようとしてたことだよ。友哉ってよっぽどすげー奴だったんだな。いくら強引にしたってお前は来ない。友哉には勝てなかった。」


なんだ……そのこと…。


中林……ちょっと変わった?

いや……もしかしてもともとはこういう奴だったの?

……わかんない。
今はいろんなことが考えられない。


助けてくれてありがと。

だけどね。


「ごめん。これ以上の関係にはなれないからね。」


まだ中林のことは信じきれない。

ただ友哉に似ている。

それだけ。



「俺のこと……嫌い?」

「うん。」


前に言ったでしょ?誰も友哉にはかなわないって。



かなうはずがないんだ。



「……そっか。わかった。」


苦笑いをする中林。

自分のカバンを持って階段を降りていった。



「じゃーな。」


軽く手を上げて。

でも安心して。

大嫌いだったのが嫌いになった。

少しだけ…ほんの少しだけ嫌いじゃなくなった。

それは昨日助けてくれたから。

ちゃんと人を助けてくれる人なんだってわかったから。

今日雄介君に言ってくれたから。


でも勘違いはしないでね?

好きにはならない。



私の中に友哉がいるかぎりね。