「じゃあ…お邪魔しました。」
外はもう真っ暗。
「んじゃちょっと待ってて。」
僚太にそう言われ階段の下で待った。
今だったら何時の電車かな……。
ケータイの時間を見ながら考える。
「お待たせ。」
そこに現れたのは自転車に乗った僚太だった。
「まだちゃんと戻ってないんだろ?一駅とはいえさ、心配だし。後ろ……乗れば?」
これはどっちなんだろう。
まださっきのことが残ってて心拍数が上がってるのか、今僚太にドキドキしてるのか。
「うん。」
私は素直に後ろに座った。
「あぶねぇからしっかり俺のこと掴んでて。」
……どこを掴めばいいんだろう。
「早くー。」
ふ……服でいいよね?
脇辺りの服を強く握った。
「……ま、いっか。んじゃ行くよ。」
出発とともに風が顔に当たる。
その風に乗せて僚太の匂いも流れてくる。
顔が似てても友哉と違うもの。
匂い。
今はこっちの匂いの方が好きだったりして。
「大丈夫?」
僚太が前を向いたまま私に聞く。
「うん。」
今はとっても幸せな気分だから。


