私がアイツに恋する時。




「次は───」


降りる駅のアナウンスする音。

私はもちろん、中林も立ち上がる。



「じゃああとでネ。」

「…おう。」


嶋田さんは中林に手を振る。

その手はなんだかイラッとさせる振り方。


そんなカップルみたいなところを見せられ外に出た。

秋穂の家に行くイコールアイツと同じ方向。


なんだか気まずい雰囲気を漂わせながら歩いていた。


「ねぇ…。」


今は…嶋田さんはいないはず。

少しだけなら…話しかけでもいいよね。



「何?」


低い声。

まるで前にケンカしたときみたい。



「どうしてさっき…私のこと見てたの?」

「別に…見てないけど。」



ウソ……。

ずっと目、合ってたんだよ?



「本当?」

「別に嘘つく必要ある?」



……っ。

言葉が何も出てこなかった。

どういうつもりでこんなこと言うの?



この前私が言ったことの……仕返し?




「ごめん。言い過ぎた。」

「……。」


どうしてこんなに胸が痛いんだろう。

こんな奴に言われたことなんて…気にしなくていいはずなのに。


「ゴメンゴメン。ちょっと最近冷たいからさ。仕返し?」



そう言って笑う中林。

そんなアイツを見てどこか安心している私がいる。



「今日は何?秋穂ん家?」

「うん。一緒に勉強。」

「そっか……まぁ…頑張れ。」



久しぶりに交わす中林との会話。

今までただ嫌でしかなかったアイツとの会話が……。

なんだかすごく楽しく感じた。