ただならぬ空気を察したかのような彼女は、私とナツくんの顔を交互に見る。



するとナツくんは少し慌てたように、



「…いや別に、なんもねーよ。

それじゃ俺、帰るから」



「…あ、そーお?」



「またな、おやすみ」



そしてそそくさと私から離れ、背を向ける。



だけど一度私のほうを振り返ると、



「…また、連絡するから」



そう一言残して帰って行った。



「うん、ばいばーい!

って、鈴菜、帰っちゃったけど…いいの?」



だけど私は放心状態でなにも答えられなくて。



思わずその場にへたりと座り込んだ。



「…鈴菜?」



花鈴が驚いて駆け寄ってくる。



だけどもう私はさっきのことで頭がいっぱいで。



ナツくんに、キスされた……。



キス…しちゃった…。



どうしよう……!!



ぐるぐると頭の中で何度も今の出来事がリピートされて、しばらくその場から動くことができなかった。