50代から70代のお兄様お姉様の集まりである理事会が、
だらだらとした雰囲気の中、なんとか終了した。


私が一番若輩者。
少し前まであった派閥争いは、
去年とおととし、父の弟と妹が相次いで亡くなり、いとこの代に代わったことで、
お互いに勢力が弱まり今は落ち着いている。

私が独身なのでいつも、
『次の理事長は?北條路家次期当主は?』
と詰め寄られる。
その毎回の質問は、学園の運営の話が終ってからにして頂きたい。

私が理事長を引退したあとは、たぶん亡くなった叔父さんの長男の息子あたりが引き継ぐのでは?と思うけど。
意欲をもって、やりたい人がやってくれれば血縁がなくてもいいと考えている。

北條路家当主は昔からの継承権の順番で良いんじゃないの?
人間の欲のぶつかり合いを見るのはもううんざりよ。


今はまだ私、この学園に携わっていたいの。
勝手に辞めさせないで。


若輩者でも理事長だし本家を継いだ当主なので、
申し訳ないけど
『今の事をまず話そう?ゴチャゴチャ言うなら引っ込んでて!』
……な心境なのだ。





「はぁ……疲れたわね、和樹。
お昼、どこで何を食べる?」


「お疲れ様でございました。
午後1時から理事長室に来客の予定ですので、近場で済ませましょう」


「え?お客様はどちら様だったかしら?
ごめんなさいね。
私ったら、全部あなたに任せっきりで本当に何も把握してないわね」


「いえ、故意にお伝え致しませんでした。
私の身内ですので…。
父が。久し振りにご挨拶に…」


「えー?直樹さんがいらっしゃるの?
どうして教えてくれなかったのよ」


「……申し訳ございません。
父は私に話があるのです。
それで、ご無沙汰しているお嬢様にもご挨拶を、と…。
べ、別に、たいした話でも無いようですし……。
……そうそう、お昼は近場の……お嬢様のお好きな、蕎麦懐石に致しましょう?」


あやしい。
何かを隠している。
和樹が挙動不審になることなんか、そうそう無いのだ。


でも、蕎麦懐石につられて、それ以上突っ込むことなく聞き流してしまった。

和樹の、私の操縦技術は他の誰にも真似の出来ない秘技なのだ……。