パドックで会いましょう

アルバムのページをめくると、若かった日の中学生のねえさんと、教師だった頃のおじさんの姿。

先輩の家で酔っ払いながらアルバムを見たあの日、担任の先生にどこか見覚えがあるとは思ったけれど、それがおじさんだとは気付かなかった。

無精髭とボサボサの頭が、実際の年齢よりもずっと歳上に見せていたせいかも知れない。

「歳なんか、一回り以上も離れてんのにな…俺はあの子を本気で好きになってしもた。中学卒業して、もう少し大人になったら一緒になろうて約束したんや。せやけど…大人になるまで、神様は待たせてはくれんかった。」

集合写真の後ろのページのクラス写真には、先生を囲んで楽しそうに笑う、ヤンチャそうな生徒たちの姿。

生徒たちから愛されていた事が窺えた。

「あの子はな…小さい頃からつらい思いをしてたのに、それを他のもんには見せんようにして生きてきたんや。小5の時にお母さんが亡くなってからは、血の繋がらん父親に散々殴られて…ひどい仕打ちを受けて…経済的に貧しくて、欲しいもんも欲しいって言えん子供時代を過ごしてな…。」

おじさんの話は、先輩から聞いた話と同じではあったけど、決定的に違う箇所があった。

それは、ねえさんと先生との間にあった、二人だけしか知らない出来事だ。

いつの間にか想いを寄せ合うようになった二人は、いつか一緒になろうと誓い合った。

ねえさんが中学を卒業して少し経った頃、ねえさんがおじさんの部屋を泣きながら訪れた。

父親の借金を返すために別の仕事をする事になったから、もう別れようとねえさんは言ったそうだ。