パドックで会いましょう

コンビニで飲み物や簡単に食べられる物を買って、おじさんのアパートの部屋を訪れた。

ドアをノックすると、おじさんが弱々しい声で返事をした。

ドアを開けると、おじさんは布団に横たわっていた。

「おじさん…まだ具合悪いんですか?」

「おう…アンチャンか…。」

僕の姿を目にして、おじさんはゆっくりと起き上がろうとした。

「あっ、そのままで。無理しないで下さい。」

おじさんは少し無理をして、血色の悪いその顔に笑みを浮かべた。

「悪いな、心配かけて…。」

「何言ってるんですか。こんな時に、遠慮なんかしなくていいんです。」

コンビニで買った物をテーブルの上に置いた。

「飲み物と…おにぎりも買ってきたんです。食べますか?」

「アンチャンはホンマに気ぃ利くのう…。やっぱり俺の嫁になるか?」

「だから、冗談は無精髭とボサボサの頭を何とかしてからにして下さい。」

「やっぱり厳しいのう…。」

おじさんはどこか嬉しそうに笑う。

「そう言えば腹減ったわ。ひとつもらおか。」

弱々しく痩せたおじさんの体を支えて、ゆっくりと起き上がらせた。

「梅、昆布、ツナマヨ…何がいいですか?」

「せやな…昆布がええな。」

おにぎりの封を開けて、おじさんに手渡した。

おじさんはそれを受け取って、ゆっくりと口に運ぶ。

僕はペットボトルのお茶のキャップを開けて、おじさんの前に置いた。