パドックで会いましょう

「先輩はいいですね。女の子にフラれた事なんてないでしょう?」

「アホか、腐るほどあるっちゅうねん!」

「ホントですか?」

「おう、相手から付き合おうて言われて付き合っても、なんかわからんけど絶対最後は俺がフラれるねん。なんでやろ?」

「さぁ…。」

なんだ、フラれるって意味が違うじゃないか。

「先輩って昔からそんなにモテたんですか?」

「まぁ、確かに子供の頃からモテたな。バレンタインとか、チョコばっかりアホほどもろて、しばらくチョコ見るのもイヤやて、小学生の頃から毎年言うてたもんなあ。」

やっぱりイケメンは子供の頃からイケメンだ。

僕なんかバレンタインにチョコをもらったのなんて、母親と祖母と、近所のおばちゃんくらいだ。

やっぱり、モテる先輩が羨ましい。

「なんで世の中、こんなに不公平なんですかねぇ…。」

「ん?なんや?」

「だってね…先輩はイケメンだから、特定の彼女を作る気はないのに、いくらでも女の人が群がって来るじゃないですか。だけど僕なんかね…本気でめちゃくちゃ好きな人でさえ、僕を本気で好きになってはくれないんですよ。」

自分で言っておきながら無性に虚しくなって、僕はグラスに残っていた日本酒をグイッと一気に飲み干した。

「なんや、おまえ…。片想いか?」

「そうですよ!悪いですか!」

僕はかなり酔っているんだろう。

頭の中ではどこか冷静なのに、言葉とか態度が自分でコントロールできない。

先輩も少し驚いているみたいだ。