パドックで会いましょう

「さっき言うたやん、夢の話。オヤジが死んでから、なんぼ疲れてても、夜寝たら夢見て夜中に目ぇ覚まして泣いて…。それでよく眠れんのよ。なんでやろ…目ぇ覚めた時に一人やと、余計につらい気がするねん。なんか大事なこと、忘れてるような気がする。」

どうすればねえさんを安心させてあげられるだろう。

僕の隣で安心してくれたら、ぐっすり眠らせてあげられるのに。

僕は子供を寝付かせる時のように、ねえさんの背中をトントンと優しく叩いた。

「僕で良ければ、ねえさんが安心してぐっすり眠れるように…もし目が覚めても一人で泣かなくて済むように…こうしてそばにいます。」

「アンチャン、やっぱり優しいなぁ…。」

ねえさんは僕の背中に腕をまわして、僕をギュッと抱きしめた。

やっと少しおさまっていたのに、突然ねえさんに抱きしめられて、また鼓動が速くなった。

「アンチャン、今のままでもじゅうぶんええ男やで。」

「…そんな事ない…。」

非力で無力な自分を隠すために優しいふりなんかしている僕は、ねえさんにそんなふうに言ってもらえるような男じゃない。

僕が本当にいい男なら、きっとねえさんをまるごと包み込んで、受け止められるはずだ。

ねえさんが背負ってきたものは、僕には想像もつかないほど、重くて悲しい。

ねえさんはたった一人で、華奢な体でその重さに耐えてきたんだ。

僕はそれを少しでも軽くしてあげられるだろうか?


ねえさんが望んでくれるなら、ずっとそばにいるのに。