パドックで会いましょう

「こないだ、オヤジが死んだ。」

「ええっ?!」

ねえさんの突然の言葉に僕は驚き、思わず大きな声を上げた。

「人間いつかは死ぬんやし、そない驚かんでも…。」

「いや…そこは普通に驚くでしょう…。」

「オヤジ言うても、血の繋がりのない赤の他人やねん。アタシが子供の頃にオカンが再婚した相手や。そのオカンも、アタシが中学上がる前に病気で死んだけどな。」

「兄弟は?」

「おらんよ。オカンが死んでから、オヤジと二人やった。」

家族との縁が薄いのか…。

ねえさんは淡々と話す。

「どうしようもないオヤジやってん。飲んだくれて仕事もせんと、博打で負けて借金ばっかり増やしてな、オカンの事、よう殴ってた。家にはしょっちゅうヤクザみたいな借金取りが来るしな、アタシは子供やったから、なんもできんといつも泣いてたわ。オカンは借金返すために寝る間も惜しんで必死で働いて、それでも足りんで、いっつも身内とか知り合いにイヤな顔されても頭下げて、借金取りに払う金借りて…そのうち病気で死んでしもた。」


ひどい話だ。

ドラマなんかではよくある話だけど、実際にそんな男と暮らしていくのは苦労が絶えなかったのだろうと思うと、胸が痛む。

「オカンが死んでから、生意気や言うてアタシもよう殴られたわ。中学に上がったら、体でも売って金稼げとかも言われたしな。そんなしょうもないオヤジやったから、早よ死んだらええのにとずっと思ってたけど、こないだやっと死んだ。」