パドックで会いましょう

「アンチャン、あったかいな。」

「あったかい?暑くないですか?」

「うん、あったかくて気持ちいい。」

今すぐこの手で、ねえさんのすべてを温められたらいいのに。

ねえさんの背中にまわした腕に、力がこもる。

「眠れそうですか?」

「どうやろ…。でもアタシよりアンチャンが寝られへんか?」

「えっ?!」

「めちゃめちゃドキドキ言うてる。」

「……仕方ないでしょう…。僕はこういう事に慣れてないんです。」

こんなふうに女の人を抱きしめるのも、一緒に寝るのも、慣れてないどころか初めてだよ!!

しかもそれが大好きなねえさんなんだから、ドキドキするなって言う方が無理な話だ。

「心臓の音、聞いとったらな…なんかようわからんけど、安心するねん。」

「それ、なんかで聞いた事ありますよ。母親のお腹にいる時に、胎内で聞いた母親の心音の記憶がどこかに残ってるとか。」

「うーん…なんやろな。似てるけど、そういうのとはまたちょっとちゃう気がする。」

ねえさんは目を閉じて、僕の左胸に耳を押し当てた。

そして少し笑って、顔を上げた。

「でもやっぱり…これは速すぎるな。」

ねえさんにドキドキしている事を、ねえさん本人に指摘されたのが恥ずかしくて、また鼓動が速くなった。

こんな僕は、大人の男には程遠い。

情けなくて奥歯をギュッと噛みしめる。