パドックで会いましょう

なんだろう…?

眠れないのかな?

ねえさんは僕のそばまで歩いて来ると、床に座り込んだ。

「もう…寝た…?」

また小さな声で尋ねたかと思うと、ねえさんは僕の背中にしがみつくようにして横になった。

僕の鼓動が急激に速くなる。

「……眠れないんですか?」

僕が尋ねると、ねえさんは僕の背中に額を押し当てて、うん、と返事をした。

「一人はイヤや。一緒に寝て欲しい。」

背中から、ねえさんの体温が伝わってくる。

「ここ、冷えますよ。それに固くて体が痛いでしょう。」

「…うん。」

僕は起き上がって、ねえさんを抱き起こした。

「じゃあ…ベッドに横になって。僕、そばにいますから。」

ねえさんは黙ってうなずいた。

固くて冷たい床に、ねえさんを寝かせるわけにはいかない。

もしかすると、そんな事は自分に対する言い訳かも知れない。

僕はただ、今にも消えてしまいそうなほど儚げなねえさんを、どこにも行かないように抱きしめたいと、そう思ったのだから。


ねえさんはベッドに横になると、僕の目をじっと見つめた。

「アンチャンも、ここに一緒に寝て。」

ためらったのは、ほんの少しだけだった。

僕はねえさんの隣で横になり、華奢なその背中に腕をまわして抱きしめた。

「こうしていても、いいですか。」

「うん…。」

ねえさんは僕の腕の中で、仔猫のようにおとなしくしている。

ねえさんの髪から、いつもとは違う、僕と同じシャンプーの匂いがした。

それだけの事で煽られる欲情を、僕は必死で理性で抑え込もうと固く目を閉じる。