パドックで会いましょう

「アンチャン、明日仕事ちゃうの?」

「明日は先週の土曜出勤の代休取ってるんで休みです。ゆっくり寝てもらっていいですよ。」

床に転がっているクッションを枕がわりにしようと、手でたぐり寄せる。

「電気、消しますね。」


部屋の明かりを消して、ベッドから離れた場所で、固く冷たい床に寝転がった。

常夜灯のオレンジ色の灯りが、ベッドに横になるねえさんのシルエットをぼんやりと浮き上がらせる。

ねえさんの腰の辺りのくびれとか、華奢な肩のラインがあまりにも艶かしくて、僕はそれを見ないように背を向けて目を閉じた。


結局、ねえさんがどうして帰りたくないと言ったのか、どうして一人でいたくないのかは、聞かなかった。

これで良かったのかな。

こんな時、先輩みたいな大人の男ならどうするんだろう?

優しく抱きしめて話を聞いて、添い寝でもしてあげるんだろうか。

ねえさんの事も、こんな時、女の人がどうして欲しいのかも知らない僕は、こうする事が精一杯だ。

変な気を起こさないうちに寝てしまおうと思うのに、同じ部屋にねえさんがいると思うと、なんだか緊張して寝付けない。

寝返りを打とうとしたけれど、ねえさんの方を向くのがなんだか後ろめたくて、やめる。

ねえさん、もう寝たかな。

「アンチャン…まだ起きてる?」

ねえさんが遠慮がちに小さな声で尋ねた。

どうしようか。

返事、した方がいいのかな?

迷っていると、背後でねえさんがベッドから起き上がり、近付いてくる気配がした。