パドックで会いましょう

「気分は悪くないですか?」

ぼんやりしているねえさんに、ミネラルウォーターを注いだグラスを差し出した。

ねえさんはうなずいて、それを受け取りゆっくりと飲んだ。

「僕のしかないけど…着替え、出しますね。」

引き出しの中からゆったりめの部屋着を出しながら、この状況が普通じゃない事をだんだん理解し始めて、酔いが覚めていく頭とは逆に、鼓動はどんどん速くなった。


まずいな、これ。


後先なんにも考えずに僕の部屋に連れてきちゃったけど、僕だって男だし、何が起こってもおかしくない状況だ。

酔って正しい判断ができなくなっているねえさんを前にして、僕の理性は保てるだろうか?

ホントにいろいろマズイ状況だ。

男なら美味しい状況だと思うのが当たり前かも知れないけれど、僕はねえさんが好きだからこそ、その場の雰囲気に流されて一線を越えるような事があってはいけないと思う。

とにかく理性が崩壊して、無理やり襲いかかるような事だけはしないようにしないと。


「今日は暑かったから、汗かいたでしょう。ねえさん、シャワー使って下さい。これ着替えです。」

目一杯平静を装って部屋着を手渡すと、ねえさんは小さく首を横に振った。

「アタシは後でええから。アンチャン先に使って。」

やっとねえさんがしゃべった。

少しホッとした。

「じゃあ…もししんどくなったら、横になってて下さいね。ベッド使っていいですから。」

「うん、ありがとう。」