パドックで会いましょう

お腹いっぱい焼肉を食べて、いつもよりゆっくりとビールを飲んだ。

ねえさんはジョッキの生ビールを何杯もおかわりして、かなり酔っている。

焼肉屋を出ると、ねえさんはおぼつかない足取りで、陽気に笑っていた。

一人で帰れるかな?

送ってあげられたらいいんだけど、僕はねえさんの住んでいる場所を知らない。

ねえさんはどこに向かおうとしているのか、フラフラしながら歩く。

今にも転んでしまいそうで危なっかしい。

見かねた僕は、ねえさんの体を支えた。

僕の背が低いから、ねえさんの綺麗に整った顔がすぐ目の前にある事に、ドキドキする。

「ねえさん、いくら僕の奢りだからって飲みすぎですよ。帰り、一人で大丈夫ですか?」

僕が尋ねると、ねえさんは更に顔を近付けた。

「もう一軒!もう一軒行こう、アンチャン!」

ち、近い…!

こんなに嬉しい状況、もうないかも知れない。

本当はまだ一緒にいたいけど、もう結構いい時間だ。

こんなに酔っているねえさんを連れ回すわけにもいかない。

「もう一軒じゃありません。こんなに酔ってるのに。帰りますよ。」

僕が少し語気を強めてそう言うと、ねえさんは立ち止まり、僕に抱きついた。

「ねっ、ねっ、ねえさん?!」

突然の事に驚き、僕は声を裏返らせた。

ねえさんは僕にしっかりとしがみついてくる。

「……まだ…。」

「…え?」

「まだ…帰りたくない…。」

ねえさんのか細い声が震えていた。

「一人でいたくない…。」

「ねえさん…。」