パドックで会いましょう

ねえさんは箸でつまんだ肉にタレをつけて、僕の方へ差し出した。

「アタシもたまには優しくしたらんとな。」

「え?」

ポカンとしている僕の方へ、ねえさんは身を乗り出して、うんと腕を伸ばしている。

「ちょっとだけ恋人ごっこでもしてみよか。ほらアンチャン、口開けて。」

「ええっ…。」

これって…いわゆる“あーんして”ってやつ?

夢?夢なのか?!

ねえさんの方からそんな事してくれるなんて!!

いや、もう夢でもなんでもいい!!

「早よ。腕疲れるやん。」

「は、はい…。」

おそるおそる口を開くと、ねえさんは僕の口に肉を入れてくれた。

「美味しい?」

「美味しいです…。」

ねえさんの食べさせてくれた肉が、まずいわけないよ!

「言うても、アンチャンの奢りやけどな!」

ねえさんはいたずらっぽく笑って、今度は自分の口に肉を運んだ。

あ、その箸…。

今、僕の口に付きましたけど…!

そんな事はまったく気にも留めない様子で、ねえさんは美味しそうに肉を食べている。

「ほらアンチャン、焦げる焦げる!」

「あっ、はい!」

僕は慌ててトングで肉をひっくり返した。

こんな些細な事にさえ動揺している僕は、やっぱり子供みたいだ。

それでも僕はねえさんに会うたびにドキドキして、ねえさんが僕に笑ってくれるだけで、たまらなく嬉しい。