パドックで会いましょう

僕は当たり障りない範囲で、先輩がとてもカッコいい事と、金曜日の合コンの話をした。

「先輩はいい人だけど、一緒にいると同じ男としては…ちょっとね、情けなくなっちゃって。やっぱり男は見た目が大事なのかなーって。女の人なら誰だって、チビで童顔の僕より、背の高いイケメン選ぶでしょう?」

「ふーん…。アタシはそうは思わんけど。言うたやろ?もっと自信持てって。」

「そうやで、アンチャン。カッコ良うなりたいのは、俺も男やしわかるけどな。それがすべてちゃうわ。それにな、うわべだけやったら、どないにでもなるぞ。」

「なんぼ見た目が男前でも、しょうもない男はいっぱいおる。見た目ブッサイクでも、中身ええ男もいっぱいおる。アンチャンはこれから両方男前になれ!」

やっぱりねえさんは横暴だ。

また僕に無理難題を…。

「…なれるかな。」

「なれるかな、やないねん。なるんや。その心意気が大事やで!アタシが認めるくらいの男前になったら、チューくらいはしたる!」

チューって…ねえさん、酔ってる?

ただの冗談なのか、僕を励ますつもりなのか。

それとも、僕がそんな男にはなれないって思うから言ってるだけ?

無意識に、ねえさんの柔らかそうな唇に視線が行ってしまい、思わず想像しそうになった。

ダメだ、こんな所でそんな事想像したら、それこそいろいろヤバイって!!

慌ててグラスのビールを飲み干して、それを打ち消した。

でも…ホントにそうなれたら…。

「…ねえさんが惚れるくらいの男前になりたいです。」

「よし、頑張れ!」

ねえさんは笑って僕の背中をバシンと叩いた。

「アンチャンもっと食え、ほっそい体して。しっかり食わんと強い男になられへんぞ!」

おじさんは追加したモツ煮込みを僕に差し出した。