パドックで会いましょう

不意に、金曜日の合コンを思い出した。

また誘われても、もう合コンは断ろう。

先輩はいい人だし悪気がないのはわかっているけど、引き立て役にされるために行くなんて、二度とごめんだ。

楽しい事なんて何一つない。

合コンに行くより、ここでこうしている方がずっと楽しい。


「アンチャン、どうした?」

「えっ?」

「難しい顔しとったで。」

ねえさんが眉間にシワを作って見せた。

「そうですか?」

「なんかイヤな事でもあったん?」

「イヤな事って言うか…。惨めと言うか、情けないと言うか。」

ねえさんは僕の目を覗き込むようにして、軽く首をかしげた。

おじさんはモツ煮込みと瓶ビールを追加して、僕のグラスにビールを注いでくれた。

「なんや、女の事か?」

おじさん、見掛けによらず鋭い…。

「うーん…。そうなるのかな…。」

直接的に彼女らに何か言われたわけでも、フラれたわけでもない。

ただ僕が勝手に不愉快になった。

それだけの事なんだけど。

「話してみ?」

ねえさんは少し笑ってタバコに火をつけた。

こんな話をするのはカッコ悪い。

でも、話せば少しはスッキリするだろうか。

「たいした事じゃないんです。いつもの事だから。」

「うん、だから今日は話してみ?いつも我慢してるんやろ?」

「まぁ…。」