パドックで会いましょう

お昼にはカツカレーを食べた。

場所が場所だけに、勝負事に勝つようにとゲン担ぎで“カツ”メニューが多いんだな。

その後もまたねえさんと一緒にパドックで予想して、100円だけ賭けた馬券を買って、ゴール前でレースを観た。

僕の予想はことごとく外れたけれど、すごく楽しい。

一度だけ、割と高いオッズがついた予想が的中して、払い戻すと7250円になった。

僕はなけなしの勇気を振り絞って、初めて勝った記念に、そのお金で帰りにビールでも飲もうと、ねえさんを誘った。

ねえさんはまた、八重歯を覗かせながら、笑ってうなずいた。

これで今日も、少しだけ長くねえさんと一緒にいられる。



最終レースの後、また先週と同じ居酒屋に行った。

ねえさんと、もちろんおじさんも一緒だけど。

先週はおじさんにご馳走してもらったから、今日は僕がご馳走すると言うと、おじさんは、一杯だけご馳走になるわ、と嬉しそうに言った。

おじさんは今日も勝ったみたいで、料理は俺がおごったる、と言ってくれた。

今日もねえさんとおじさんは、競馬と野球と、身近な他愛もない話で盛り上がっている。

野球の話に入れない僕は、その話を聞きながらビールを飲んだ。


不思議なほど、お互いの話はしないんだな。