パドックで会いましょう

なんとか無事に今週の仕事を終えた金曜日。

定時が近付くにつれ、僕はソワソワして落ち着かなかった。

一体どんな人が来るんだろう?

なんとなく、イヤな予感もする。

今までだって、こういった機会はあったけど、大概、歳上の女の人からは、可愛いだのなんだのと頭を撫で回されて、それで終わりだ。

僕を仔犬か園児と勘違いしているのかと、腹が立った事もある。

可愛いなんて言われて喜ぶ成人男性、いないだろう?

いくら相手が歳上でも、それは喜べない。

僕だってもう社会人だ。

小柄でも童顔でも成人男性だ。

人並みの恋愛願望だって、性欲だってある。

いい加減、可愛いだけの男からは卒業だ!



…なんて、意気込んではみたものの。

先輩の友人らしき女性たちは、実際の年齢よりもずっと大人に感じた。

いや、違うな。

大人と言うよりは老けて見えたと言うか、言い方は悪いがケバく見えた。

きっちり化粧をして、小綺麗な服を着て、高そうなブランドバッグを持っていて、僕が苦手な強めの香水の匂いがした。

そして案の定僕は、ちっちゃい、可愛いと撫でまわされ、仔犬か園児扱いだ。

彼女たちは僕が関東出身なのが珍しいのか、地元の神奈川だけじゃなく、東京の事ばかり尋ねられた。

関東イコール東京じゃないって。

僕は大学卒業まで地元にいたから、東京の事なんてたいして知らない。

正直に知らないと答えると、あからさまにがっかりされてしまう。