列の最後尾に並んで待った末に、未成年ではとか学生ではとか訝られながらも、ようやく入場料を払い、なんとか場内に入る事ができた。

しかし馬券売り場はどこだろう?

場内の案内板を見て位置を確認しようと立ち止まると、後ろから歩いて来た人たちにぶつかられた。

「こんな所で立ち止まんな、邪魔やろが!」

前をろくに見もしないで歩いてきたこの人たちも悪いのに、関西弁で怒鳴られると、怖くて文句も言い返せない。

神奈川生まれの神奈川育ちの僕にとって、関西は未知の世界で、言葉といい勢いといい、何もかもが恐ろしい。

とりあえず殴られないうちに謝っておこう。

「す、すみません…。」

素直に謝ったと言うのに、男は僕のシャツの襟首をガシッとつかんで顔をグッと近付けた。

「すみませんで済んだら警察要らんのじゃ!」

えぇーっ?!

ぶつかっただけで大袈裟な。

そもそも、ぶつかって来たのはそっちじゃないか!

…なんて、怖くて口が裂けても言えない!!

強面の男たちに、わけのわからない因縁をつけられる僕を、誰もが見ないふりして素通りしていく。

誰も助けてくれないなんて、関西人は情に厚いんじゃなかったのか?!

こちらに来てからまだ1週間しか経っていないのに、意外と冷たい関西人に絶望しそうになっていると、誰かが男の腕を掴んだ。

天の助けか、はたまた神か。

きっとさらにイカツイ強そうな男の人に違いない。