パドックで会いましょう

午後3時。

僕は先輩に自販機コーナーへ連れ出された。

お茶休憩をする人たちで、自販機コーナーは賑わっている。

先輩に飲み物の入ったカップを差し出され、僕はお礼を言ってから、その甘い香りに一瞬首をかしげた。

なぜゆえにミルクココア?

もしかしてコーヒーも飲めないほど子供だと思われてるのかとも思ったけれど、先週は一緒にコーヒーを飲んでいた事を考えると、おそらく先輩は、僕が身長を伸ばしたいと今も思っているのを知ってカフェインを気にしたんだろう。

無駄な気遣いのような気もするが、こういうところはいい人だと思う。

「今週の金曜の夜、空けとけよ。」

「え?金曜ですか?」

「おまえの望み通り、合コンやったる。」

は、早い…!!

合コンしてやるって言ってから、まだ2時間半ほどしか経っていないのに、もうセッティング済み?

「おまえ、女と経験ないやろう?」

「……男もありませんけどね。」

「おまえみたいなやつはな、最初は歳上の女の方がええねん。可愛がってもらえるからな。」

可愛がってもらえるって…。

「誠に不本意なんですが。」

「ええねん、最初は慣らしてもらえ。そこでいろいろ学んだらええ。」

……やっぱり不本意なんですが。

確かにあれこれ経験してみたいと言う気持ちがないわけじゃない。

いや、大いにあるけれど、だ。

僕はそれより純粋に恋愛がしたい。

…なんて言ったら、少女趣味だとか思われて、また子供扱いされるんだろうか。

「とりあえず金曜の夜、空けとけよ。」

「わかりました…。」

せっかく先輩が気を遣ってくれたんだから、断るのも申し訳ない。

おそらく僕に拒否権などないんだろう。

自分から積極的に出会いを求めて行けるタイプではないんだし、ここは素直に先輩の話に乗っかるとしよう。