パドックで会いましょう

世の中は不公平だ。

先輩は顔がいいだけでなく、背も高くて何もかもがカッコ良くて、僕にないものをたくさん持ってる。

「これからでも伸ばせないかな…。せめて170くらいは欲しいんですけど。」

「ハタチ過ぎても伸びるヤツもおるけどな。せいぜい何ミリか、よう伸びて1センチやろ。」

「やっぱりそうですよね…。」

先輩を追い越すほどとはいかなくても、せめて日本人の成人男性の平均身長くらいは欲しい。

数ミリじゃ追い付かない。

「そんなに気になるんやったら、毎日牛乳飲んでめざし食うて、日光浴でもしとけ。成長促進するサプリとか食品なんかもあるはずや。」

「へぇ…。」

よし、あとでネット検索してみよう。

「そんなに背が気になるって、なんか理由でもあるんか?」

「いっぱいありますよ。僕は背が低いだけじゃなくて童顔ですから。どこに行っても年齢確認されるんです。」

「ほう、それから?」

「背の高い女の人にはちっちゃくて可愛いとか言われるし…。同級生の女の子からも弟みたいだとか言われて、全然男として見てもらえないし。」

先輩はお茶を飲み込んで、にやっと笑った。

「おまえ、男に迫られた事あるやろう?」

「なんでわかるんですか…。」

思えば僕のモテ期は、男子校に通っていた中学から高校の6年間。

ただし、相手は男ばかり。

もちろん僕にはソッチの趣味はないから、付き合ってくれと何度迫られても、頑なに拒んだ。

たまに強引な男に襲われそうになりながらも、なんとか必死でこの身を守ってきたんだ。