パドックで会いましょう

翌日の昼休み。

僕は約束通り、先輩に昼飯を奢ってもらった。

会社のそばの安い定食屋の、日替わり定食。

安くて速くて量が多くて美味しいから、いいんだけどさ。

先輩、男の後輩にはお金を遣わない主義なんだな。

しかしイケメンと言うのは、安い定食屋で焼き魚を食べてるだけでも絵になるもんだ。

男はやっぱり見た目か?


「先輩、身長何センチあるんですか?」

「身長?182やったかな。」

182もあるんだ…羨ましい。

一体何を食べればそんなに大きくなれるんだ?

「なんや、急に。」

「背が高くていいなぁと思って。」

先輩は味噌汁で口の中の御飯を流し込んで、向かいに座っている僕をチラッと見た。

「あー、悪くはないな。おまえは?」

「163.4です。」

僕がミリ単位まで身長を言うのがおかしかったのか、先輩はきんぴらごぼうを箸でつまみながら吹き出した。

「俺、中1の最初にはそれくらいあったぞ。成長期逃したんか?」

成長期はあった。

あったけど、期待していたほどは伸びなかったっていうだけだ。

「これでも伸びたんですよ。僕、生まれた時から小柄で、中1の最初は150もなかったんですから。」

「ほーぉ。のびしろが足りんかったか。」