事情があってな、なんて言ってたけど、先輩の後ろで女の人の笑い声がしていたのを、僕は聞き逃さなかった。

大方、夕べの合コンで意気投合した可愛い女の子をお持ち帰りしちゃったとか、そんなところだろう。

…羨ましい。

先輩は僕と違ってイケメンで背が高くて、おまけに口が達者だからモテるんだ。

彼女はいないと言っていたけど、女の子に不自由しているようには見えない。

女の子をお持ち帰りどころか、背が低くて童顔で冴えない僕は、好きになってもフラれるのが怖くて、告白する勇気もなくて、もちろん恋愛経験がまったくない。

モテる先輩が、ただひたすら羨ましい!

今すぐ先輩より背の高いイケメンになって、可愛い女の子と付き合いたい!!


……そんな事は置いといて。


しかしどうしたものか。

競馬場なんて初めて来るのに、馬券の買い方はおろか、まずはどこに行けばいいのかもわからない。

だけど、頼まれちゃったしな。

僕は仕方なく、並々ならぬ闘志を燃やす人たちの進む先を見る。

どうやらあの場所で入場料を払って場内に入るようだ。

この人たちについて行けば、なんとかなるのかな?

とりあえず頼まれた馬券を買って帰ろう。

電車代と入場料は、明日の昼飯を奢ってもらえばチャラになるはずだ。