パドックで会いましょう

馬券売り場からフードコーナーへ移動して、ねえさんは僕の手を引きながら人だかりへと向かう。

「ここのカツサンドがな、めっちゃ美味しいねん。」

「そうなんですか?僕、カツサンド好きです。食べたいな。」

「よし、カツサンドに決まりやな。」

カツサンドとコーヒーを買って、外に出た。

ターフビジョンの見える階段に腰掛けて、カツサンドの箱を開ける。

ねえさんはカツサンドを美味しそうに頬張りながら、僕の方を見た。

「どない?初めてって言うてたけど、競馬場は楽しい?」

「はい、楽しいです。」

「そら良かった。」

もちろん一人なら、こんなに楽しいとは思わなかっただろう。

競馬の事はなんにも知らない僕に、あれこれ教えてくれたねえさんがいたから、こんなに楽しいんだと思う。

どこでどんな出逢いがあるかなんて、わからないものだな。

僕もカツサンドにかぶりついた。

「美味しい?」

「美味しいです!」

「せやろ?ここで一番のアタシのお気に入りやからな。」

ねえさんは子供みたいに大きく口を開いて、パクリとカツサンドにかぶりついた。

美人なのに気取らない人だな。

若い女性にしては珍しい薄化粧も、飾り気のないラフな服装も、すべてがこの人を引き立てているように見えてくる。