パドックで会いましょう

お昼時。

ねえさんが大きく伸びをした。

「なぁ、お腹空かへん?そろそろお昼にしようか。」

ねえさんはまた僕の腕を掴んで歩き出した。

「あの…どちらへ?」

「フードコーナー。お昼ごはん食べるやろ?」

「おじさんはいいんですか?」

「おっちゃんはおっちゃんで、好きなようにしてるからええねん。」

ねえさんとおじさんは顔見知りではあるようだけど、ここで顔を合わせたからと言って、常に行動を共にしているわけではなさそうだ。

「そうや。今やったら馬券売り場空いてるはずやで。頼まれた馬券、先に買(こ)うとき。」

ねえさんは僕を馬券売り場に連れて行き、馬券の買い方を教えてくれた。

ねえさんに教わりながら、マークシートを鉛筆で塗りつぶす。

まるで学生の時のマークシート試験みたいだ。

そんな事を思いながらも、僕のすぐとなりにいるねえさんとの距離の近さに思わずドキドキしてしまう。

モテた経験がないからな。

女の人がこんな近くにいる事なんて、滅多にない。

わざと失敗して、時間稼ぎをしてやろうかなんて、バカみたいな事まで考えてしまう僕が情けない。

よこしまな考えは捨てよう。


素直にねえさんの言う事を聞いて、頼まれていた馬券を無事に買う事ができた。