パドックで会いましょう

無事に全馬ゲートインを済ませると、スターターの合図でゲートが開いた。

レースの始まりだ。

ゲートから一斉に馬が飛び出す中、2番の馬がわずかに出遅れた。

「あー、出遅れた。新馬にはようある事や。」

騎手が出遅れを取り戻そうと手綱をさばく。

順調にスタートを切った馬たちの馬群の先頭には4番の馬がいる。

1番の馬と3番の馬は、馬群の後方に控えている。

「さぁ、どっから仕掛けるんや?」

最終コーナーの手前で4番の馬が馬群を抜け出した。

「おい、やっぱり4番来るんちゃうか?!」

いつの間にかねえさんの隣にいたおじさんが声をあげた。

「あー、仕掛けどころ間違えよったな。あいつは直線でガレて沈むやろ。」

最終コーナーを回り直線に入った。

馬たちはゴールめがけて最後の脚を振り絞る。

地を這うような轟音が近づいて来ると、ねえさんはキラキラと目を輝かせた。

「来たで…!!」

「すごっ…何ですか、これ?地響き?」

あまりの迫力に、僕は思わず息を飲む。

「馬の蹄の音。すごいやろ?」

後方から1番と3番の馬が一気に追い上げてくる。

「よっしゃ行けー!!」

馬群を大きく引き離し、先頭で横並びになった1番と3番の馬が、激しく競り合いながらゴールした。