パドックで会いましょう

「なんや、いつも言われてしょげてるんか。若いんやから焦らんでもええよ。これからどんどん大人っぽく男らしくなれるって。」

「なりたいですけどね…。」

できればあなたのような大人の女性に釣り合うくらいの大人の男にね、なんて歯の浮くような台詞、僕には似合わない。

「せめて、どこに行っても年齢確認されないようになりたいです。」

肩を落として呟く僕の肩を、ねえさんはポンポンと叩いて笑った。

「なれるなれる。そのうちイヤでもオッサンになるからな。」

「オッサンですか…。」

それでは僕は、オッサンになるまで見た目は子供だという事か?

「年下の可愛い男が好きー!っていう女もおるから、若いうちはええんちゃう?」

「……いればいいんですけどね。」

可愛いとか童顔とかイヤと言うほど言われてきたけど、恋愛対象として見られた事なんて一度もない。

人並みの恋愛経験をする事もできなかった過去を振り返って、余計に落ち込んでしまった。

「しょげるな、そのうちアンタの事がええって言う女が一人くらいは現れるはずやと思うで、多分、おそらく。」

「それ…すっごく曖昧ですね…。」

励ますには望みの薄過ぎる言い方だろう。

嘘でもいいから、もうちょっと強く希望を持たせてくれないかな。