パドックで会いましょう

競馬場を出て、しっかり手を繋いで駅に向かって歩く。

「今度…二人でおじさんのお墓参りに行きましょう。」

「うん。ちゃんと報告せんとな。」




おじさんに最後に会った時、僕は頼まれた。


ねえさんを幸せにして欲しい、と。


この先、ねえさんが失ってしまった記憶が戻るのか、それは誰にもわからない。


もしそんな日が来たら僕は、ずっとねえさんを大切に想い見守り続けたおじさんの気持ちを、ねえさんに話したいと思う。




おじさん。


そちらの世界にも、競馬場はあるのかな?


案外、亡くなった名馬たちのレースを楽しんでいたりして。



いつか僕らが天寿をまっとうしたら、また一緒に競馬を観て、ビールを飲みましょうね。





その時はまた、パドックで会いましょう。