君についた10のウソ

「……沙耶」



ボソリとあたしの名前を呼ぶ声が聞こえ、後ろを向く。



「沙耶はどうしたい?」



突っ伏していた顔をあげてあたしに問いかける梓。



「透もあたしも、分かってるわよ。沙耶の気持ち。優のこと、信じていたいんでしょ…?」


「……うん」



優のことを好きでいること。


それは優を信じ続けることとイコールで結ばれる。


反対に。


あたしが優のことを好きじゃなくなる=“裏切り”だ。



優のこと、好きでいたい。


優のこと、裏切りたくない。



あたしのすべては優だから。


優のことを裏切ったとき、あたしはあたしじゃなくなるの。



「厄介なことになったわねぇ……」


「…人間の感情って、なんでこんなに複雑なんだろう……」


「さぁね。でも、だからこそ人間なんじゃない?」


「………」



梓の言葉に返事を返さずに空を見上げると。


澄んだ空に一本の飛行機雲が伸びていた。